Rinda-Ring

Event1:ゴースト屋敷「入り口からやばい」




「んじゃ、行くとしますか!」
と私は扉に手をかけた。

 ぎぃ、と気弱なきしみをたてて扉は開き、中をのぞき込んだ。
 ごくりと唾を飲み込んだ。

 なにか視線を感じた気がしたけれど、視線をさまよわせていると、後ろから押された。
 まず目の前に広がったのは広間。二階まで吹き抜けになっていて、中央階段が真ん前にあって、階段は壁に当たって二方向に分かれ、二階右側と左側にドアが二つずつ並んでいる。
 そして階段をのぼらない場合。一階には二つのドアがある。

 でも、両方とも狂ったように釘が、板がうちつけてあった。
 まるで、なにかがでてくるのを恐れたみたいに。

「……………ねぇ」
「………うん」
「まずどっから行く?」
「そうだね、まず……帰ったりして」
と、何気なく入ってきた扉を振り返った。

 そして総毛だった。






お前たちはもう帰れない



「やあああああああっっっ」

「わ、びっくりした」
 ……シロウのいたいけな悲鳴の方に驚いてしまった。

「なんだよこれ、前はなかったぞ!!」
「あ、二回目だからヘ・イ・キ☆と思ってましたか兄さん。違いますヨー、毎回趣向を変えてあるんですよー」
「趣向!? これ、これが趣向だってか!!?」
 シロウはバッチョを両手でつかんでぎゅうぎゅう握りしめて問う。こわがるもの、バッチョをもつかむ。……なかなかいい感触だからな。

「マップはどうする? ノア、覚えててくれる?」
「うん。いいけど」
「だいじょうぶですよー。ダンジョンはですね、ウィンドウでマップを呼び出せます! 一回行ったところは表示されます。全部表示させたい場合は、ダンジョンの地図を手に入れないといけません」
「そっか! マッピングが必要ないなら、ちょっと楽だね!」

 シロウは放っておくとして、ノアとどちらの道を行くか決めた。
「二階のどの扉からか、でしょー。いきなり罠満載だったら困るね」
「全部鍵かかってるのか、調べないと。行こ!」



扉A ↑階段↑ 扉C
↑階段↑
扉B 扉D
↓入り口↓


 調べたところ、三つの扉(赤く表示されている)に鍵がかかっていて、開いているのはひとつだけだった。この屋敷をさすらうのも、まずは一本道で迷う余地はないということだ。

「じゃあ、誰が開ける?」

 三人でしーんとした。
「ほら、君が来たいって言ったんじゃないか、サラ」
 伝家の宝刀「男でしょう?」をぬくには分が悪いので、きっと睨むだけに留めておいた。ノアは、
「ほら私魔法使いだし。魔法使いは後衛だからね。後ろにいるから」
と笑顔で言い放った。いきなり戦闘になっても大変だから、確かにそれは一理ある。あるけど、いや、いいんだけど、えーと。
 私も開けたくない。だって、外のガイコツとあの扉に張りついてたゾンビの顔! あきらかにトーンが違うではないか! 鬼太郎のアニメバージョンと漫画バージョンくらい違う。怖さのモノが違うったら。

「いや、もう。いい! 開けてやるわ。私はあの伝説の恐怖ゲー「静岡」を真夜中一人でクリアーした女だぁ!」
「あ、あのゲームを。特に最新作の4が怖いと」
「怖かったぁー!!」
 バッチョが嬉しげに話に乗ってくるが、乗せてる場合ではない!
 気合いを込めて扉を開いた!!

 バサバサバサバサ!!
と、コウモリがいっぱいあらわれた!
 音楽が切り替わる。
 戦闘だ。

 パーティじゃ、初めての戦闘だ!


■ ■ ■ ■


 シロウが剣を構え直した。敵は四匹。コウモリって小さいもんだと思ってたけど、これはデカイ。ゾウの耳くらいあるような。
「サラさん攻撃攻撃! ぼーっとしてちゃいけませんよ!!」
「あ!」
 カンナの声に体が動いた。

 武闘家は一番素早く動けるのだ!
 空中にいる奴らの一匹の足を捕らえて、思い切り地面に叩きつけた。
 ガスッ! と音がして、敵にダメージを与えた感触。でもしとめきれなかった。コウモリはへろへろと宙に戻った。

「あぁ〜〜、なんていう凶暴な。なんで普通にパンチを決めないですか!」
「えっ、だって空中にいるのにパンチ当てても効かないでしょ!?」
「違いますぅ、格好は関係ないです、触っても撫でてもパンチでも今のでも、ダメージは一緒です」
「この女の凶暴さは今に始まったことじゃねぇ……あれは……そう、はじまりの台地でのことだった」
「思い出を語ってる場合じゃありませんよバッチョさぁん!」

 なんかお笑いがかったパーティだよなとシロウがひとりごちている。そこで、

「1、2、3、ファイヤー!!!」

と叫ぶ声がして振り返るとノアが杖を振りかざしていた。い、いろいろとなにかツッコミポイントがあるんだけど、今はそれどころじゃない。
 出てくるはずの、炎が。出てない! 魔法を失敗してるのだ!!
「そ、その杖欠陥品なの!?」
「ええーっ! お金貯めて買ったのに!!」
 コウモリの一斉攻撃が始まった。四匹で私たちを取り囲み、ビシバシと当たってくる。HPが減っていく〜!!
「このぉ!」
とやり返そうとするが、当たらない。
「ああーっっ、ダメです。ノアさん、パーティに加入した魔法使いは、目を閉じて呪文を唱えないと」
「だっっれが決めたそんなルールーーーーー!!!!!」
 ノアが怒り心頭の叫びをとどろかせたところで、シロウの攻撃がきた。戦士はやっぱり、重いらしい。そして同時に私も、体が動かせた。

「でやぁっ!」
とシロウが手つかずのコウモリを倒し、私はさっきダメージを与えていたコウモリにとどめの一撃を加えた。つもりだったけど、しとめきれずにコウモリはよろよろとまた宙に浮かんだ。

 パーティのRP平均のせいで、コウモリもレベル1や2じゃないのだ。
 ああ、カルマなんてためるんじゃなかったぁぁ!

 目を閉じて放ったノアの魔法が、二匹のコウモリを倒した。(レベル2のファイヤーだから、ターゲット一匹とその隣にいるモンスターを倒せるんだそうだ)そして残る一匹がへろへろと攻撃してくる。
 私はそれをひらりとかわした。返す刀でパンチを当てると、モンスターは地面に落ちて、消えた。


■ ■ ■ ■


 扉Bの先は、狭い部屋だった。



■ ■ ■ ■

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