Rinda-Ring

Event1:ゴースト屋敷「鍵を開けましょう」


B1〜3F 「走るゾンビとゴーストたちのフロア」MAP

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現在いる場所 扉・閉まっている
廊下・通れるところ 扉・開いている
× いやなものが…… × 絵を見つけた






 それから今度はゴーストのいた部屋に行き、花の絵の鍵を開けることになった。

「ねぇー、バッチョ」
「なんです」
「ほんとはこの鍵どうやって手に入るはずだったの?」
 あ〜、とバッチョは遠い目をした。
「まぁいいです、言いましょう。えーと、
甦った致死トラップゾンビに追いかけられているドーラ、必死で走る彼女はあなたにバトンタッチ。代わりに逃げるあなた。30秒耐えきることができたあなたにドーラは『助けてなんて言ってない』と毒矢のような言葉を投げつけて逃げていく。そのあと床にきらりと光るものが。それはひそかに流れた感謝の涙だったのか。イヤ違う、鍵だった……という寸法で」
「よかったサラが取ってくれて」
 重く重くノアは言った。
「ま、あなたがたでしたらドーラを見捨てるに違いありませんな! そうなるとゲームオーバーになってたんで、結果的に幸運でした。これもサラっちのスキルを淡々と整えておいた私の手柄と言わねばなりますまい」
「言わんでいい!」
 あーもう、スキルのこと思い出してしまった。さっさと訂正をばしないと。人に見られたら赤っ恥だって。
「ほんとにあいつ、このイベントの癌のような存在ね」
「そこまで言うの」
「俺は、うっかり八兵衛だと思うよ」
「どういう表現なの」
 もう、突っ込んでる場合ではない! 鍵を開けました。



「イヤーッ、どうして逃げる前に捕まえるわけ!? あなたたち、ゲームの醍醐味ってものを分かってないわ!! 推理小説で先に結末読むような真似だわ!」

 妖精さん……どれもこれもスパイシーな性格をしているようだ。

「もう、いいわよ。私の秘密を教えるわ。3サイズは上から10センチ……じょ、じょうだんよぅ。そんな恐い顔してすごまないでー!
 えーとね、あなたたちあいつにとっても困らされてるでしょ。ほら、あいつよ。ドーラ。あの子もね、可哀相な子なのよね。幼いのにわけの分からない呪いにかけられて閉じこめられている……常に混乱しているような状態よ。だから、彼女の真実は常に偽りなの。右に行けと言えば左に行き、飛び上がれと言えば穴を掘り出すような子供よ。
 もとはこの近くの村の女の子だったの。戦争に巻き込まれて焼き払われた、小さな村。ううん、違うの。村が焼けたのはドーラが見てしまったからだわ。村がなくなったのはあの子のせい。焼いたのは、暗黒公だもの。知ってる? 暗黒公ギュンター。
 ギュンターは……あー、それは私が喋っちゃいけないんだわ。えーと、んじゃちょっぱやで言うわ!
 秘密をのぞいた子供を失った親は縹渺たる哀切の歌を歌うのよ。
 んじゃ!」

 消えた。手を振ったまま消えていったけど……



■ ■ ■ ■



「なんだか、うーん、全然意味が分からないや」
「あなたは仕方ないわよ。シロウ。ツボの中にいたんですもの。あなたは分かるわよね、サラ」
「え……あっ……う……」
「……………」
 凄みのある視線に惨殺される心地であります。
 いや、謎はほんとにノアちゃんに全力でおまかせして私は違うこと考えてたかったわけよ。たとえばちょいちょい話にでてくる暗黒公っての?
 暗黒公ギュンター。私たちレベルが上がったらその男に会うことになるのかしら。ボスだったりしてね。それっぽいわ。どんな顔だろう。赤毛で、色気のある顔立ちのつよーい美景さんを激しく希望します。人外系がでてきたらレベル99にあげてでも倒しに行くことをここに表明します。
「サラさん……なんてとんでもない表明するですか」
「馬鹿な……やつだ……」
「かーっ、ひとりごとじゃないのよ、ひとりごとー!」

 その後ろ頭を攻撃されて前に転びかけた。く、くくく、コウモリがあらわれた! 
 最初に戦った時よりは格段に戦闘が楽だった。シロウがいない間ノアと二人で中ボス倒したりして地味にレベルの間が狭まってるからね! シロウのリンダポイントなどこわくない、こわくない。厄介だけどな。
「わーんごめんよ。でも君たちほんとにレベルが上がったみたいだね。ノアの魔法も上がってるし。そろそろ次の町でどういう買い物をするかとか、どういう魔法を買うかとか、考えた方がいいね」
「あ、それバッチリ計画立てないとねーー! 氷もいいけどそれよりまず風か土? 風が味方の素早さあげたり耐久力高めたりで、土が敵の邪魔する系の魔法なんだよね」
「火に風じゃあおってるみたいで……」
 シロウがつぶやくとノアはにっこり微笑んだ。威圧攻撃である。
「でも装備も揃えたいわ! 私、まだ初期装備なんだから」
 手を挙げて言った。そうなの、そうなんです。私はまだ初期装備なんです。町じゃあすかんぴんだったもんな。今はちょっとはうるおってるけど。武闘家はそんなに装備しまくるタイプの職業じゃないからいいんだけど。むしろ初期の軽装備でいつまでもオッケー。でも、でもそれって貧乏くさいし! 所帯じみてるし! あるじゃないさ、特殊効果のある装備とか、武器とか。リンダポイントあがりまくりそうなやつ。そういうのを一回つけてみたい!
「私もそろそろ杖を買い換えたいの。ルビーがついてるやつ……8000Gしたんだよね。我慢したんだけど」
「それは……我慢、すべきだ」
 モンタ様が有り難いお言葉を呟いてくれました。

 そして私たちはシロウと再々回した階段の所に戻った。
 そのままあがっていく。イヤ、ちょっと待て。

「ねぇ! カンナ情報によると花は五本なわけだけど」
「そ、そんな形容よしてくださぃぃ!!」
「あー、うん。カンナ情報ね。五本だよね。んで私たちが見つけた花は四本だよね。あと一本、どっかで探さないといけないよねっていいたいんでしょ」
「ノア……読心術はやめてください」
 



■ ■ ■ ■



 それから私たちは探した探した。四階の白い薔薇は「聖女の名前を知ってる」ってふれこみだったからなんだか後回しにして、先にその花を見つけたかったんである。
 だけど、どこにもないのだ。
 私たちは必死になって探した。マリア人形に「私は待っています……」とか言われながらテーブルの裏、時計を取り外そうとしたり(無理だった)。果ては梯子をおりてって地下の逆さゾンビの所までいった。
 けど、すごかった。
 思い出したくない。地下はゴーストとゾンビがひしめきあってたんである。部屋のあっちこっちを好き勝手に歩き回っているゾンビは、こちらが面と向かって殴りかからないかぎり戦闘にならない。ゴーストはふわふわと浮いてるやつに接触しないとこちらに気づかない。
 だから取り囲まれてアウト、てことにはならなかったんだけど。いや、しかしきっしょく悪い光景だった。絵を探すどころじゃなかったけど……役立たずのシロウははしごのところで固まってたけど、一応探しましたさ。
 なかったけど。
「ああんもう、なんだか臭い気がする!」
と嘆くとバッチョが
「そんなことないです。リングワールドのゾンビは無味無臭を目指してます」
「うるさーい!」
 しかし、探し続けました。

 そして、見つけました。
「あーもう帰りたーい!!」
と、マリア人形の部屋で天井を見上げたとき。天井に、絵を。

「ノアさん、あの絵、焼いておしまいになって」
「よろしいんですの?」
「いっそこころおきなくすっぱりと灰にして」
「ああああああ、待って下さい待って下さい、あなたたち本気っぽいのでとてもとても不安です。嘘ですよね、そんな、焼いたりなんてしませんよね」
 カンナは両手を上下させて私たちをたしなめた。
 たしなめまくりである。この子の仕事はナビのはずだったのに……

「なんで天井に絵、飾るかなぁ〜〜、つくった奴性格悪すぎるよ……実感したよ」
「目の前にあらわれたら速攻ボゴるね。バッチョ、飛んでんじゃないッ!! 目障りよ!!」
 この部屋にあったテーブルをまず部屋の隅に押しやって、それから椅子をくみ上げていって天井に手が届くようにするのだ。なかなか重労働だった。ハチはいい気に鼻歌まじりである。

「サラー、気をつけてー!!」
 そして案の定私がのぼってるんだわ。嗚呼。




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