Rinda-Ring

Event1:ゴースト屋敷「応援している場合ではない」


4F 「喋る男の油絵のフロア」MAP




現在いる場所 扉・閉まっている
廊下・通れるところ 扉・開いている
大きな壺






「あ、私逃げないから。安心して、そんなに暇じゃないの私。
 ハークレイオ魔道学の教本の妖精語翻訳が私の人生の仕事だから。だからさっさと妖精界に戻りたいの。
 あ、うん。消えた子たちは妖精界に戻ったのよ。仕事を終えたからね。私はあなたがたが助けてくれるまでここに閉じこめられてたのよ。ほんとに、因果な呪いよね。ちなみに私たちは花の精なのよ。地面でぷらぷら遊んでたんだけど、なんだか呪いにつかまっちゃったわけなの。辛く悲しい出来事だったんだけど、語るとあまりに短いわね。

 画家の青年は姉妹を見つめていたのよ。一人は気さくに人々に力を分け与える娘。一人は思慮深く落ち着いたまなざしで人々から離れている娘。ふたりとも、愛してたんだと思うな。あの画家。ほとんど父親みたいな愛情よね。
 姉妹ははじめから聖女と魔女といわれてたんじゃないのよ。確かに聖女と言われてはいたわ。だけどね、二人の運命を決めたのは旅の若者。
 若者は言ったのよ。

 この地に眠る謎を解き明かすために旅を続けています。
 世界は破滅に瀕している。邪悪なるものが目覚めようとしているのだ。
 それをはばむために必要なのは、異世界とこの世界をつなげる門。封印された円環。その名も……

 言わなくても分かるわよね。あー、うん、そろそろかったるくなってきたから手短に言うわ。えっとぉー、姉とか妹とかそういうのウザいんじゃないかな。どっちがどうって考えると混乱するわ。運に任せた二者択一っていうのも、おつなものよ。
 それじゃ、ばいばーい!」



 またもや、消えた。
 妖精界というのがあるらしい。なんだかイベントとかで行けそうな感じじゃない。妖精がいっぱいいるわけね! うーん、行きたくない!

「ねぇ、どうしてそうイベントの謎解きと関係ないことばかり考えるわけ」
「いや、そのぅ、ノアちゃんなにか分かった?」
「うーん、まだなにも言えないわ。材料が全部そろってない」
「探偵みたいで、素敵」
「俺全然分からないよ。謎解きは君に任せるよ」
「じゃあゾンビはあなたに任せるから」
「そ、それは……それだけは……」

 まぁでもちょっと考えてみると。
 姉と妹がいました、と。
 たしか妹が聖女で姉が魔女、だっけか?
 んでどちらかの名前を唱えるべきなのだ、と。
 でもこの屋敷のやつらウソツキだから信じるな、と。

 いや、ほんとにわけわからないです。
「そんな謎の残骸並べて分かるわけないでしょ!」
 ごもっともであります。




■ ■ ■ ■




 そしてそして、最後の花を開けるときが来ました! 最後ってまだ漆黒の薔薇があるけどね。それは先っぽいし。シロウは大事に三本の花をもっている。赤、薄桃、深緑。あまり派手な色はそろってない。まーー、あの絵に加わるんだからそんな派手な花でも困るわけだけど。
 いっそヒマワリ咲かすのも面白いか。……想像するととんでもない光景だった。


「今度は俺が開けるよ」
 シロウが言ったので、鍵を渡した。
「そういえばそろそろ薬草も心許ないよね。どこかで薬草自動販売機とかあればいいのに」
「そうだ、それいいや」
「ボスと戦ってるときに『待ってて今薬草買ってくるー!』 なんて一人逃げ出したりしてね。んで腕一杯にアイテム抱えて戻ってくるの」
「……それもどうか……」
 シロウは鍵を開けた。そして、妖精を取り逃がした。

「ああー!」
「てもう、ばかっっっ」
「サラ、頑張ってぇー!」

 それほど苦労せずに捕まえることができたけど、シロウには平謝りされたけど、ほんとにもう。

「あっはっはー、二回目ね。今度は入れ替わってくれないのぅ?」
「だまれハチの眷属。握りつぶすぞ」
 妖精は軽口を叩くのをやめた。

「聖女の名前? うん、知ってるぅ。彼女の名前はね、エアリエルっていったの。彼女の言葉には万金の重みがあったのよ。優しい娘だったの。あの姉妹は両方美人だったわ。ま、私たち妖精ほどじゃないけどー。
 二人は恋を知らなかったの。あの晩、旅の若者があらわれるまで。二人は同じ人を好きになったの……彼女たちをずっとみてた画家の青年じゃなくてね。私は画家の青年を応援してたんだけどねー! やっぱり短期決戦では美形が強いわよね。まぁ画家の青年も煮え切らなかったしィ、仕方ないかってみんなで喋ってたんだけど……
 ま、いっかぁ。あなたたち、これからいろいろ混乱するかも知れないけど……妖精は嘘をつかない。私たちの言葉には偽りがない。それだけは覚えてて。別に、覚えてなくてもいいっけどー!」


 じゃあねー! と、ずいぶん明るい退場だった。



■ ■ ■ ■




 これで花を全部集めたことになる……んじゃなかった、黒がまだだったけど、画家に持って行くべき花は全部そろった!
 全員でガッツポーズを取って意気揚々と階段を上っていく。

 マリアが言ってた言葉は、名を求める子供、花の絵の扉、あとは、夢見る鍵、だっけか……。夢見る鍵って、なんですかほんま。分かんないけど、でもやっぱり一歩一歩歩んでるよね。大丈夫、ゴールは近いはずだ……



「て、なにこれ!?」


 いきなり五階の様相が変わっていた。壁に塗りたくられていた絵の具がどろどろと溶解するように渦を巻く。壁が鳴動している。啜り泣くような声が聞こえる。
「あ、あわわわ」
「シロウ……気をしっかり」
 こいつらはおいとくとして。L字廊下の角を曲がった。するとそこには画家ゾンビが立ちつくしていた。

「絵に塗り込められた怨念がざわめきだす……」
 感情のない声が言う。
「哀れな魂が食らい尽くされようとしている……お前たち、助けるか?」
 は!?
 見ると、ゾンビの描いた絵が変化していた。絵の具がどろどろと自分勝手に動いて、その固まりが、泥人形みたいに溶けようとしている人の形を形作った。

「いやぁーー!!」

 その手がつかんでいるのは小娘。ドーラ。このままでは化け物に、ドーラが倒されてしまう。

「がんばれ!」
 なんて、化け物を応援している場合ではない。事態はやばそうだった。真っ青になっているシロウもやばそうだったけど。
「ノア、行くよー! シロウも、その、気をしっかり!!」

 そして、絵に閉じこめられた怨念が襲いかかってきた!!




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