Rinda-Ring Event1:ゴースト屋敷「我ガ名ヲ呼ベ」 |
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1F〜2F 「正面玄関のフロア」MAP
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その小部屋は、二階でどうしても開かなかった二つの扉の向こう側だった。続き部屋になっていたのである。 すると、私たちは全てのマップを埋めたことになる。特に特典はないみたいだけど、マップをコンプリートするのは気持ちのいいことだ。100パーセントマップってちゃんとウィンドウ立ち上がるし。 アイテムを分配し、体力も整えたところで私たち、部屋を出た。 ……なんだか懐かしい。自分たちが入ってきた扉が見える。あああれからどれだけ時間が流れたんだろう。長いようで短い。短いようで……たぶん大して長くない。 大階段を下りようとしたところでノアに止められた。 「待ちなさいよ、こっちの部屋にある黒薔薇をとっていかないと。何が起こるのか分からないのよ。気をつけて!」 「は、はーい」 止めてくれて本当に良かった。シロウはびくびくしている。何が起こるのか分からないって、突然天井からゾンビが落ちてきたりはしないと思うけど。 そしてコの字の廊下の向かい側、最初に入った扉に入った。ここまで戻って来るのにどれだけかかったことか……て、うっとりしてちゃいかんいかん。 が、特にモンスターがかかってくる様子もない。 私たちは無事、絵に辿り着いた。 |
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鍵を開ける。そして中をのぞき込む。逃げやしないかと恐れていたのだけど、その心配はなかった。そこにいた妖精は大変優雅でおとなしい、虫の一匹にしとくには惜しいような淑女だった。 「誉めてもなにも、でないわぁ……私が知ってることを教えろ? 私はね……画家がどちらを選ぶのかが気になっていたの。でもあの甲斐性なし、どっちつかずでね。姉妹は、まぁ、画家のことなんて気にしてなかったんだけど。あいつを選んでおけばとりあえず幸せになれたと思うのよ? でもどうしてかしら、人間て、自分が不幸になる相手を選びたがったりするものよね。 ギュンターにいかれたのは、妹。妹よ。聖女? ハッ、人間たちがどう呼ぶかなんて興味ないわね。私が知ってるのは人間たちが魔女と呼んだ女の名前。それは、キルサよ。キルサは可哀相に、絶望して首をくくって死んでしまったの。足下には五本の薔薇が咲いたと言うわ。神も、粋なことをするわよね。いやー、もしかしてなにかの嫌味なのかしら。ま・ね。どっちでもいいんだけどね……あなたたち、一応、気をつけなさいよね。最後に、来るわよ……」 消えた。別の妖精たちと同じように。 私たちは顔を見合わせた。 |
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「全ての情報を集めると、出てくる答はひとつよね。……ねぇ、分かるわよね。ここまできたら」 「う、うん」 「そ、そうね」 ノアは私たちを疑わしそうに眺めやった。だってね、そんなね、自信たっぷりに分かったなんて言ったら「じゃあどうなの」て返されるに決まってるし! ああん私はまるで宿題忘れた小学生みたいな感じ!? ドーラが見たものの意味。 妖精たちの言葉。 死人たちの言ったこと。 エアリエル。そして、キルサ。 さぁ、どちらの名前を呼ぶ? 私たちは部屋を出た。そして大階段を下りていく。ぎしぎしとしなる床に、心臓がつかまれる心地だ。冷たい汗をかいてる。シロウの息の音が聞こえる。だけど文句を言う気にはなれない。 階段を、下りた。私たちはひとつ固まりになって周囲に気を配る。 「どうする」 「なに」 「扉開けて……出てく? 一気にトンズラすれば行けるような気が……しない」 二人とも首を振る。私と、同意見。眉をひそめたとき、とん、と扉を叩く音がした。目の前の、私たちがこの屋敷に入ってきた扉から。 トン、トントントン。 怖い。めちゃくちゃ怖い。 「黙って出ていくのは誰ですか」 ヒッと喉で声を立てた。静かな女の声。綺麗で、静かで、恐ろしい。 「だ・あ・れ?」 ドーン! と台風みたいな音。鳴っているのは、屋敷中だ。そこかしこで笑い声が、泣き声が。うめき声が。聞こえてくる! 「出しませんよ……決して……許しませんよ」 ぎゅっとノアの手を握った。怖い、肩に妖精さんが止まって死ね死ね呟かれたらこんな心地だろうか。 そして、物音が最高潮に達した。 ばりばりばりばりと木を裂く音。 「あ、あれ!」 「こっちからも!?」 左右には、木をめちゃくちゃに打ちつけた扉があった。まるで何かが出てくるのを恐れたみたいに。それがこちらに曲がるほどたわんで、そして雷が落ちるような音と共に破られる。キャーッと悲鳴が轟いた。私の? ノアの? 両方? ……シロウのも混じってたかもしれない。いや、そして私たちは見つめていた。 右の扉から巨大な金髪の女のゴースト。 左の扉から巨大な黒髪の女のゴースト。 二人はごうとせまり、私たちが固まっているちょうど上で手を取り合った。ふたりの姿はひとつとなり、魂は最悪に気持ちの悪い融合を果たす。二人の身体からは悪夢のようにどろどろとしたものが流れ落ち、蛇がはえ、蜘蛛みたいな足がかさかさと生え、火傷だらけの醜い顔と、一点の汚れもない白い肌の顔がはんぶんずつに混じり合った女の顔が私たちを見下ろした。 シロウの取り出した女神像が、宙に浮く。 「サァ。我ガ名ヲ呼ベ」 聖女と魔女の魂が、命じた。 |