北の帝王は語った。
「我が力をもって世界に君臨する」



 東の女帝は語った。
「わらわに最も相応しい力を手に入れよう」



 西の王は語った。
「世界中の富を集めて見せよう」



 南の森のエルフは語った。
「人の世にかかわることは、我らの破滅につながるだろう」



 最奥の秘術にふれた錬金術師は語った。
「リンダリングという指輪はまだこの世には存在していない……」



 剣士のギルドの長は語った。
「強くなることしか考えてねぇ奴らはいっぱいいるさ」



 名もなき農夫は語った。
「せめてもう少し、水場が近くにあったらなぁ?」



 世界最大の炎の呪文を守る老人は語った。
「わしのところにはまだ、誰一人たどりつかんよ」



 世界最大の氷の呪文を守る老婆は語った。
「竜を慰める力となるのは、魔法ではない……」



 魔物の命を助けた巫女は語った。
「私にはたいしたことなど、できませんが」



 百歩離れた的を射た弓使いは語った。
「これで彼女のハートもゲットできたらなぁ」



 金に汚いよごれ仕事の商人は語った。
「もう金儲けのことしか考えられませんよ。薬草ひとついかがです!?」



 世界最高の剣士の二つ名を持つ剣士は語った。
「俺に至る奴にはまだお目にかかったことがないな」



 千の夢を見る魔女は語った。
「私が見たのは終わりが来る夢……勇者はいつ現れる?」



 戦争に参加した名もなき兵士は語った。
「こんなもんかよって感じだ。こんなもんなのかよ!? 俺」



 恋人の帰りを待ちきれず旅にでた少女は語った。
「もしかして私の方が強くなっちゃったんじゃないかなぁ〜」



 今もダンジョンでトラップにひっかかったままの旅人は語った。
「おぉ〜〜い……だれかぁ……」



 魔物の中で最大の力を持つ竜に対峙した冒険者は語った。
「ま、まままだ全然レベル足りてねぇし!!!」



 右手のひとふりで百の首を飛ばす死に神が語った。
「………退屈ね」



 最初にして最後の女は語った。
「私はリンダ、この世の神に仕える巫女です」



 教会にて高みにのぼった男は語った。
「この世はすべて、力によって動く。弱者はそのことを知らざる者」



 大きな目をした幼い少女は語った。
「………………おちっこ」



 勇者の名を求める男は語った。
「どうやったら勇者になれるんだヨォ!!?」



 みるもの全てを魅了するダンサーは語った。
「この踊りで世界中を幸せにしてみせるわ!」



 今日も薬草を売り続ける旅の商人は語った。
「人を信じすぎては、いけませんね」



 暗黒の神を信じる者は語った。
「ただで生き返るのはええけど、まじ博打やで。やめときや」



 剣に命を賭ける傭兵は語った。
「戦いがあるならば、往く」



 鋼の忠誠を誓う男は語った。
「我が命、かの君の為に」



 世界で最も我が儘な姫君は語った。
「わらわの本当の望みを教えてやろうか? ……いやじゃ!」



 今日も遺跡を発掘する、伝説の武器を求める盗賊は語った。
「俺はトレジャーハンターだっつーの! いいぜ、ぼろもうけ」



 話しかけるものに死を与える邪術師は語った。
「死にたいか」



 城から城へ、秘密の書状を届ける忍者は語った。
「俺は、伝書鳩じゃないんだが……」



 今年長者番付けで一位になった男は語った。
「商売の秘訣は、お客様の立場にたって考えることですね」



 戦いもせず働きもせず今日も元気に遊んでる、遊び人は語った。
「だってぇ、かったるいしぃ、まだ魔王も現れてないしぃ?」



 信仰をきわめんがため、修行を続ける男は語った。
「私は見た……あの地には、あの神殿には……」



 銀の聖騎士の二つ名を持つ男は語った。
「戦いが俺たちを呼んでいる!」



 ようやく千人の客を迎えた宿屋を経営する男は語った。
「宿屋なんか職として地味だって思うでしょう? そうなんですよねぇ」



 酒場で、謎めいた笑みを浮かべる男は語った。
「きっひっひっひ……何も知らずに」



 最高の不運を誇るとたたえられる男は語った。
「べっ、べつに俺不運なんかじゃないよ!!」



 エルフの中のエルフと褒めそやされる姫君は語った。
「この世の全て……すべては勇者様のために」



 伝説の武器を守る老人は語った。
「暇なもんじゃよ」



 悪徳の知恵を巡らせる大臣は語った。
「私は私心でなく、我が国のためを思っているのですぞ!!」



 ようやく旅にでることができた、剣士は語った。
「勇者になれればいいなって、思いますけど」



 風の魔法を得意とする少女は語った。
「びゅうっとね! 決めればいいでしょ?」



 眉間にしわを寄せて悩む男は語った。
「リンダリングとは……我らははじめに戻るべきなのだな」





 善なる神が語った。
「この世の全てが力で決着がつくなら」

 悪なる神が語った。
「我を倒してみせよ」

 善なる神が語った。
「勇者とは」

 悪なる神は語った。
「挑戦する者」

 最後の巫女が語った。

「世界があなたを望むならば、きっとあなたは辿り着く。
 だから旅にでるのです」