Rinda-Ring Lv2−12 五千ゴールド! 五千ゴールド! |
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ガラハドール通りは人通りが多い時間帯だったみたい。 「勇者が出た! て言われたからかけつけたらガセネタだったみたいでよう」 「なんでかけつけるの?」 「そいつ倒して俺が勇者になろうと思って……」 なんてがはがは笑いながら歩いてる一行とか。 (勇者ってそんなふうに交代できたりなんか、しないと思う!) とても綺麗な僧侶のお姉さんが歩いてるのをぽーっと眺めたりとか。いかにもレベルが高そうな装備だった。杖が、ノアの持ってるとねりこの杖とは輝きが違っていた。 そのまま道を直行して、商店街みたいな一角にたどりついた。 風船が飛んでいるけど、変な広告がまき散らされてる様子はない。しかし看板が雨後の竹の子のようににょきにょきにょきにょき、にょきにょきにょきにょき、生えまくっている。 『斧ならお任せ、トールの店』 『保ちがいい剣ならこちら! 黒カラスの店』(黒くないカラスなんかいるぅ? ってノアがつっこんだ) 『イバラの鞭で恋人がウッフン!』 『魅惑の防具、女性向け』 『男ならふんどし装備でHPにプラス50のボーナスを!』 『戦士向け』 『武闘家の武器、そろってます』 ……などなど。読んでいるだけで日が暮れそう、ああ武闘家の武器だって! もう、突撃しなければならない! 「ガラハドール通りから、戦士系のフリギールギルド、はこっちみたい! 早く行こう!」 道が三またになっている。レアラの説明通り、戦士系のフリギールギルド、魔法使い系のマハドールギルド、上級者向けのシャンレールギルド、と分かれている。 そしてフリギールギルドはただいま5パーセント割引中。 「早く、早く行こうよ!」 「サラ、もしかして君、買い物好き?」 「そりゃあもちろん買い物大好き! なにしぶってんの、ノア」 「マハドールギルドから行かない?」 「…………」 この子が最初に買い物をしたら、すぐに使い切るんじゃないだろうか。 と、笑顔で拒否した。 「まずはこっちの通りから見てこうよ! だいじょうぶだって、五千ゴールドもあるんだもん!」 「そうよね、五千ゴールドだもんね」 ノアもにっこりしてこちらに来た。 通りの人の数が増えた。店の数は、通りの両隣に……ううん分からないくらい並んでいる。これは目星をつけて行くしかない。私は目的をもって買い物に出たのに結果的に全然違うの買ってきたりするタイプ。だから今のうちに話し合っておいた。 「私は、なにか防具が欲しい! なにか特殊効果のあるアイテムでもいいんだけど」 「俺は、今の装備を充実させたいかな……剣とか、研ぎに出して耐久度をチェックしておきたいし。あ、武器屋でチェックしてくれるんだよ」 「私は杖。宝石がついてるやつね。あと、フリーズ系の魔法もいちおう、持っておきたいかなぁ。ファイアー系しか持ってないと、後々苦労しそうだしね。ほら、ユリアさんの言ってたイベントにもちゃんと挑戦しないといけないし」 忘れてたよ、そんな話。 |
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おお、すごく格好いい女戦士さんが店から出てきた。新品らしい剣を満足げに持っていく。 その店は『タイマイヘルムの店』とあった。 「んじゃ、まずこの店から見てみよっか!」 ぎい、と木の扉を開けて中を覗いた。 すると中にはいろいろな武器が並んでいて、カウンタの向こうには腕っぷしの強そうなおじさんがいた。 「いらっしゃい!」 と声をかけて出迎えてくれた。 タイマイヘルムっていうのは、つまりでんでん虫のカラの形をした兜のことだった。すごーくレベルが高い高級品とのことで、おじさんが自慢たらたら説明をしてくれた。 ちなみに説明はあまり聞いていなかった。 「全身鎧だって!? そんな重そうなの着たくないよ……暑そうだしさ。着るだけならいいけど……」 と挑戦したシロウが試着してカーテンの向こうから出てきたとき、私とノアは腹を抱えて笑った。 だって。タイマイシリーズが! 全身でんでん虫のカラをあしらった鎧が! それを着たシロウの情けなさそうな顔が!! 「笑うなー! でもこれ動きやすいし値段も800ゴールドで手頃かも……」 「やめてよ」 ぴったりとノアは笑みを消して言った。 「そんなの着た仲間とは一緒に歩けないからねっ!」 制作者のおじさんは怒るより先にしおしおに肩を落とし、そんなにイヤかなぁでんでん虫……とつぶやいた。や、でんでん虫は可愛いんだけどねー! それが大変写実的にあしらわれた鎧は可愛くない。うずまいた形で頭の上に乗ってるヘルムと着たら、トグロ巻いた蛇か、あるいは大変言いにくいけどウンコちゃんにしか見えない。言いにくいとかいいながら堂々と言ってしまったけど。 「いいよ、マニアには人気があるからよ……」 元気なくしてしまったので思わずでんでん虫の飾りのついたブレスレットを買いそうになってしまった。でも、これも微妙に可愛くない品で……ノアが 「人情で物を買うな」 と鋭く囁きかけてきて、止められた。 シロウの剣を見てもらうと、おじさんは「お、これはなかなかの剣だね」と誉めてくれた。 「耐久度は……まだまだ大丈夫。研ぎに出してくれたら、これなら剣の強さを上げられるよ。230ゴールドだ、どうする?」 もちろんお願いした。 |
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続いて入ったの店ではアイテムがひしめいていた。 店にはワゴンがいくつも並んでいて、閉店セールと紙に書いてある。人々はアイテムを手にとってためすがめつ見つめ、買うかどうか悩んでいる。 私とノアはすぐに夢中になった。 だって、ひとつ50ゴールド! 5000ゴールドあったら、100個もアイテムが買えてしまうわけよ!!(持ちきれないけど) 「これ装備すると魔法使いだと防御力がプラス5なんだって!」 「よく見ろよ、リンダポイントも上昇するって書いてあるだろ!」 「いやーん、これ可愛い! ブタのぬいぐるみだよ、さびしい旅のおともにだってぇ! 私、ずっと寂しかった。でもそんな日々もようやく終わり……」 「嘘ついてまで買うほどのものか!? このブタ、目がうつろで怖い!」 「このスカート着ると素早さがあがるんだって!」 「このサファイア、魔力を上げる効果があるんだって」 「あれ、この匂い袋をつけていると魅力がアップ!」 「うわー、すごい腕輪! 呪われてるんだって、やっぱり古そうな宝石ついてるもんね。シロウ、これ買って装備してくれない?」 「ねぇねぇこれも買っていいー!?」 シロウはやや青ざめ、ぷるぷるしながら怒鳴った。 「どれも、だめだーーーー!」 |