LV3 story-6 世界で一番我が儘な姫君 〜私の薔薇〜 |
お城の中はまさに「豪華、絢爛!!」といった様子だった。これってなんていうんだろ、ロココ調? 派手な装飾のほどこされた廊下、広場、部屋。「金かかってまっせー」といった様子がしかし、全く押しつけがましくない。いやみったらしくない。ごく自然に当たり前に豪奢にして華美。 そこかしこに花が飾ってあるのが効いてるのかなあ。 ここは世界で一番豊かな国王の城だもんね。 当たり前と言えば、当たり前。 風船で着地した広場は長くて暗い廊下につながっていて、うねうねうねうねとなだらかなカーブを描く道を歩いていくとやがて光る場所にでた。 太陽の光ではなく。 それは、黄金の色彩だった。 エメラルド色の外側からははかりしれない、内側は黄金の渦だった。金色の装飾と薔薇のお城だった。ノアなんかぽかーんとして、見ほれているかと思ったら 「どうやったら手にはいるかしらこの城……」 と呟いていた。どんな作戦が頭の中に広がっているのか恐ろしいや。 ユリアさんは首を傾げてにこっと笑い、こちらです、と先を歩いた。 さすがリンダリングすごいゲームだよ……! と口にしたらリンダポイントがさがりそーなことを思ってしまう。思わずにいられない。これマジでお城だよ。ザ・キャッスルオブキャッスルだよ。 だって広すぎて迷うもん。ありえない……! はじまりの町だって大きいと思ったけど、この城はきっとあの町がひとつ入るよ。 道を通る冒険者たちはみんな私たちと似たようなおのぼりさんで、感心しながらきょろきょろしているのがほほえましい。 騎士が出てきて身元あらため、なんて真似はされなかった。どころか、お城の中を走り回っているたくさんのメイドさんたちが「こんにちは!」「こんにちは!」とさわやかに挨拶してくれる。金髪に黒髪におさげにショートカットに、と実に多彩なメイドさんたちがいると思ったら、 「アリエッタ姫に世界で一番美味しいケーキを!」 「アリエッタ姫に朝露を浴びた今日一番美しい薔薇を!」 「アリエッタ姫にふわふわほかほかとろとろなオムライスを!」 「アリエッタ姫にさくっと香ばしいゴマの風味のクッキーを!」 て………、口々に言い合っている。 すごい。あれだけの数の人間がひとりのために動き回ってるこの事実。 「アリエッタ姫ってどんなひとなんですか?」 ユリアさんにきいてみた。 すると、彼女はくるりっと振り返った。その軽やかなターンにびっくりしているとがしっと肩を掴まれ、ぐいっと顔を近づけられて、 「そんなこと、一言じゃ言えませんよ!」 と熱っぽく言われてしまった。な、なんでこんな近くで言うの。 「えっと……一言じゃなくても……」 「でも敢えて一言でいうなら……萌え、です!」 も、萌え? 私たち三人の声がひとつになった。ユリアさんは私を解放し、赤くなった頬を両手で押さえながらまた軽やかなターンもどきを決めた。 「可愛いというかいじらしいというか、切ないというか、可愛いというか、プリティというか、天使というか、この世に舞い降りた花の妖精というか、世界で一番一番いっっちばん可愛いのはもう、アリエッタ様なんですからーー!」 きっと、このひとは、まともだと信じていたのに。 なにこのハイテンション。なにこの歌うような声。びっくりしているとまた、 「お陰様で私のイベント欄はこんな状態ですよ〜」 とまるで飼い犬の写真を見せるみたいにウィンドウを立ち上げてくれた。 「な、な、な」 いっせーのーで。 「な、な、なんじゃこりゃーーーー!!」 と私たち声を揃えてしまった。 揃えずにはいられなかった。 |
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姫を天使と呼ぶユリアさんこそまさに天使に見えるようなイベント状況……えっと、アリエッタ姫関連のイベントだけでいくつあった!? 二十は、軽かったような気がするんだけど。 「姫関係のイベントをこなしていくとですね! 姫との親密度が上がってくのですよ!! 最初はタカビーだった姫がだんだんそのタカビーさをそこなうことなく可愛らしく我が儘を言ってくれるようになるんです!」 早く気づいてそれなにも変わってないわ! 「そしてですね、姫関係のイベントをコンプリートすると、あっと驚くファイナルイベントが起こるんです……!」 それ、『わらわは宇宙を支配したいのじゃ〜〜〜〜!!』てイベントじゃなくて? 熱弁を振るうユリアさんを見ていて、私たちは秘密で顔を見合わせた。 「ファンだ」 「ファンだね」 「ファンだよ……」 て目で語り合う。 そしてお城の装飾がより可愛らしく、よりピンク色になっている空間に出た。それはお城の東側一帯。アリエッタ姫の居住区に入ったのだ。メイドさんのダッシュがより早く、より的確に、より悲壮になっている。ピンクのカーテンがひらひら、甘いにおいがふわふわ、天使の絵の描かれた廊下を歩いていく……。 そして。 |
わらわの部屋 | ||
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て。看板(?)の出てる場所に出た。 なんてーか……どう、つっこめばいい、の、か、な………… 「入りますよ!」 ユリアさんは足取りもルンルンで入っていく。 私たちの足取りはそこまで軽くなかったけど。いちおう、ずるずるとついていったのだっ、た。 |