イベント2 淑女は眠る、イバラの中 |
2−8 運命は、三択 |
えーーと、真珠をゲットした私は、シロウとノアに合流しようと思った。 けど、ふたりが見つからなかったので街をうろつくことになった……。 「あーん、なんだろ、なんで一人ぼっちなんだろ。ねぇバッチョ。私これからどうしたらいいと思う?」 「あんたの生き様のことなんか知りま……えっと、うん、街の人に話をきくとイイと思うよ!」 「そうだよねー。なんかこう、色々曖昧なままで来てる気がするわ」 ノアの頭の中では整理されてるのかも知れないけど。私はすでに見失っていたりして……。 真珠の首飾りをゲットしたら、恋のしおりを手に入れることができて、そしてそれをドジョウヒゲに渡したら「猫語の教科書」をもらえるから、それを使ってヴィクトリアにきくといいのよね。 アリーゼは一体、どこにいるの? って。 見たこともないお姫様。アリーゼは一体、どこにいるんだろう? 彼女の母親もまた、失踪しているのだ。このふたつの事件は関係あるようで関係なく、その実密接にからみあっている……複雑な形容をしたのは、執事のイシューさんだった。 関係あるなら、ある。ないならない。そこらへん、100か0かって話じゃない? 天気予報じゃあるまいし、ぐだぐだと人の心を惑わせやがって。 はっきり言えばいいものをあの執事、ふざけてるわよね。つらつら考えていると、ほんとろくでもないヒントばかりくれやがって、役になんか立たないっての。 「文句言いに行こう」 「へ!? サラっち、あんたまたなにを……」 「ちゃんとしたヒント、もらいに行こう。このままではひきさがれないっ」 「あーれー、やめてーやめてーといいつつ面白そうだからヤメナイデー」 「ほんと不思議なんだけど、あんた一体なんの役にたつの?」 カジノを出てまっすぐ歩けば、すぐトルデッテ伯爵の城が見える。というかどこからでも見えるけどね、このでかい城は。 「おっ?」 道に出ると、世界は黒く染まっていた。や、夜が来てるってことだけどね。昼と夜だと店の品揃えが違ったりとか出てくるモンスターが違うとか、ちょこちょこ違うことがあるんだけど、今は関係ない。 夜だからといって冒険者がいなくなってしまうなんてこともない。 そして私はひとり、城へ歩いていった……。 |
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「は、あいつら」 門の前には、あのなりきり門番たちがいた。またあいつらそろいも揃って世に害毒まき散らしてんのね、とこぶしを握ったときだった。 「あっ……」 反射的にそばにあった木に身を隠した。 ひっそりと歩いていく女の影。あれは、あのアラビアンな格好は、間違いない。 シャーリーだ。シャーリーは、ひたひたとなりきり門番たちに近づいていく。 「あんたたち、きちんと仕事はしているようね」 「ウヒッ、ちゃんとしてるですよ」 「してるですよ!」 「いいこと、この城に冒険者を近づけないこと。特に、シスター・セーラは絶対に入れてはならない。分かるわね?」 「ウホッ、完璧です!」 「パーフェクトっ!」 ああ、遠目から見てもやつら、マヌケだわ。真面目にクイズに答えた自分が憎いってーの。 でもシスター・セーラってなに。なんなんだろう。 「あのイシューにも、きちんと脅迫はすませているわ。彼は決して冒険者に答えを言うことはできない……ふふふふ、アリーゼは夢の中、もうすぐ生まれ出るわ、泡沫の宝玉が。そうすればきっと、邪の黒オパール団の……誰? 誰かいるの?」 私の目の前にウィンドウが立ち上がった。 |
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な、なななな、なんなのよこの三択!!! とくにこの、三番! へっくしょんの部分がめちゃくちゃ気になるっつーーの!! 見てみるとシャーリーたちはぴたりと動きを止めていて、私が選択するまで時間が流れないみたいだ。 え、えーーーと。 見抜いた! て飛び出したいところだけど、そうなると確実に戦闘よね? あのシャーリーはきっとレベルが高い魔法使いだと思う。となると薬草がほとんどないいたいけな武闘家ひとりきりじゃー、かなわないと思う。悪辣な魔法使いと朴訥な戦士の助けがいるわ。 わしは通りすがり……てなんなのこの口調。なんとなくこれ選ぶと、 「ちょっと待てぇぇぇぇい!」 「ヘイ、ウェイト、ヘイヘイヘイ!!」 「ヘイヘイヘイ、お前……あやしいやつ!!」 て、あのなりきり門番と戦闘になる気がするわ。切実にそういう予感がするわ。となると、あいつらふたりがかりで私を倒しにくるって寸法で、そして私は純情可憐な武闘家(薬草こころもとなし)、ひとりきりでなにができるってーの。ここは残虐な魔法使いと猪突な戦士の助けが欲しいところ。 ああんでもこの三番。怪しすぎる! 怪しすぎて、選びたくないんだけど、でも、これしかないわよね!!? で、三番を選択した。 「ニャーーン……へっくしょん!」 |
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「猫……!?」 もう、心臓が止まった。 振り返ったシャーリーと、なりきり門番たち。ああこの選択すると問答無用で戦闘になったりとか…… 「くしゃみの音が」 ああんあのマヌケどうでもいいことを! そこは! 是が非でも! 無視して欲しいポイントだってばーー!! がさ、がさがさがさがさ。 私が身を任せていた木が揺れた。そして、ぽーんと飛び出してきたのは。 猫だった。ヴィクトリアではない。どこにでもいそうな、野良猫。 「ぎゃああああ猫ッ!!」 効果、てきめんだった。シャーリーは大音声で悲鳴をあげて逃げていった。猫、怖いらしい。門番達もつきあいで走っていった。 どうやら……助かったみたい。よかった。 そして朝になった。もちろん何時間もたったとかではなくて、しばらくしたら昼夜切り替わるのだ。 私は息をついて城を見上げる。門が閉まっていた。あれ、さっきは違ったはず……? 「入城条件を満たしてないからだよ、サラっち」 「へ?」 「城に入るには、ヴィクトリアが一緒でないと無理なんだよ? ほんとにもう、困ったひとだこと」 「早く言え」 そして城に入ることができないまま、私は漫然と街をほっつき歩いた。またフリギールギルドとかに遊びに行くのもいいかなぁと思ったけど、ただ単に歩くのも楽しかった。そういやシスター・セーラというの……。 さっきのシャーリーの話、色々考慮の余地があるよね。ノアに話さないとな。 「あ、毎晩あのイベントは起こるから、体験してもらうのがいいんでなくて?」 「そうなの?」 「そうじゃないとみんなにきちんと情報がいかないじゃないノ」 「ああ、そうだね」 しかしこいつの口調……わからん。 |