イベント2 淑女は眠る、イバラの中


2−20 トルデッテ城の戦い!



 私たちは城に向かって走った。

 にわか門番がいやしないか一瞬ものすごく心配したけど、いなかった。いや、もちろんシャーリーのそばにいるんだろう。戦闘……になるんだろうか。
「ねぇ、宝玉、もし取られたらどうなんだろ!?」
「アリーゼがちゃんと目覚めることができないとか。ジャンが言ってたじゃない。夢を奪われて死んだも同然になる、とか」
「ううう、それは絶対ここまできて許されない〜〜!!」
 走った。

「何事です!」
 執事のイシューさんが出てきて、私たちを見て目を丸くした。もめごとは……と叫ぼうとした彼をおさえたのは、クラリーネ夫人の一喝だった。
「イシュー、準備なさい。……戦争です! オパール団を、壊滅させますよ!!」
 執事はぽかんとした。そして、満面に笑みを浮かべて胸に手を当て静かな一礼を返す。
「承知いたしました、奥様」

 城は三階まで。中央階段をのぼっていこうとすると、上にシャーリーが立っていた。
「ほほほほ、ここまで来たの、諦めの悪い子供たちね!」
 シャーリーは右手のオパールをひらめかせた。

「地獄のそこの釜よ開きてその臓物をぶちまけよ!! よみがえれ死人ども!!」

 どっわあぁぁぁ! と悲鳴を上げたのはシロウだけ。廊下からぽこぽことゾンビが生えてきたのはどーゆーシステムかとはげ上がるほど問いつめたいけど、廊下が動くんだもの、ゾンビも生えるわさ。そう考えたい。
「破邪!」
 そしてすかさずセーラさんが僧侶の法力を発揮した。神々の加護により、まがまがしいものたちが消えていく!
「わぁ、素晴らしいな神って!」
なんて喜んでるシロウ君には思い切りつっこみたい。
 お前悪神信仰だろ、と。



* * * * * * *



 ウィンドウが立ち上がった。
 180、と数字。1ずつ減っていく。そうか、0になるまでにアリーゼのお父さんのところにたどり着かないとゲームオーバーってわけね! ……オーバーなって、どこまで話が戻るのか……そもそもこのイベント自体失敗、ということになるのか……後ろ向きなことは考えない、いつだって前を向いてゾンビを撃破! そんな生き様でゴーだ!

「た、ぁぁぁぁ!!」
「ファイアー!」

 ところどころ要所で強いモンスターが現れる。一度は牛頭人身のミノタウロスが現れた。よだれを撒き散らす、ものすごい気持ち悪い敵。なんというか嫌い。一目で大嫌いになった。
 レベル違いすぎるよな、と考えたときだった。
「お行きなさい」
と、イシューさんが後ろから飛び出た。そのままミノタウロスに襲いかかっていく。ものすごい強さであることはその動きで分かった。前のイベントで、すごく強いゾンビと会ったけど……あまり差が感じられない。残って一緒に戦う必要はまるでなかった。
 階段を上っていく。

 そして三階中央、豪華な扉を開いて向こうに行こうとするシャーリーと門番二人。

「待てぇぇ!」

 追いすがり、叫ぶ。するとシャーリーは床に蛇を叩きつけた。そこから沼が広がってく。
「毒の沼よ、止まりなさい!」
 セーラさんが叫んだ。
「一歩でも進むと体力を奪われるわ。二歩進むと死ぬわね」
「…………どうすれば?」

 セーラさんは杖を構えた。
「ここで、ずっと回復魔法を唱え続けるわ。体力が減ってもそのたびに回復する」
 教会でやってた、あれね。
「でもそうすると私はここから動けなくなります。あなたたち、戦闘は大丈夫ね? もしかしたらこの、リンリンベルを必要としているかしら……?」
 懐から出されたのは、見覚えのあるベル。
 アレは……ゴースト屋敷で、エチゴヤたちを呼び出した鐘だ。司祭とか商人とかを呼び出せて、アイテムも買える。でも、料金は割高。ふと見ると床に体力回復の円陣がある。
 そうだよね。うん、そうだよね。でもこんなときに興をそぐなぁ、なんて思いつつもこれは大事だよね。でもとりあえず……

「今のところ困ってないよね」
「うん。薬草……あるし。さっきの戦闘でお金入ったけど、でもねぇ」
「武器買う?」
「足りないと思う。んじゃ……とりあえず今回はお助けベル使うのはやめとこうか」
「あ、そういうことになりましたんで」

とお願いするとセーラさんは杖を構え、目を閉じた。クラリーネ夫人はその隣に立つ。
「ありがとう、冒険者たち。これは使ってください」
とアイテムをくれた。それも「ハッスル剤」×3。アリーゼはノアがもっていた。

「行くよー!」
 私たちは沼を踏んだ。
 相談してたせいで数字が180から21まで減っていた。やばいやばい……



* * * * * * *



 そして、私たちは部屋に飛び込んでいった。
 今まさに伯爵の手を開こうとしている三人組!!

「待ちなさい!」
「そこまでよ!」
「………動くな!」
 私たちは指を突きつけて叫んだ。(シロウがやや台詞に悩んでたけど)

 シャーリーが髪をかきあげながら私たちの前に立ちはだかる。
「私たち邪のオパール団……止められると思うなら止めてごらんなさい、その力で!!」




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