がつーん、とおしりを打った。
「いて、ててて……」
「おしりが割れた!」
「悪いけどそんな古典的なギャグ、聞きたくないのよね」
ノアが冷たく告げながら立ち上がった。衣擦れの音がする。
壁にロウソクが並んでいる。ここは……地下道かな?
どこかにつながってるみたい。
「キャンディーの時間なのじゃ!」
壷の中の姫君は元気よくそんなことを言ってくれた。
「わっ、キャンディーがあと三つしかないよ。アイテム屋さんに行って仕入れないと。
上に上がれるかなあ」
「というか、どういう事態なのかなこれ」
「さあ……」
私たちは道にそって歩き出した。
地下道、か。
虹の町の下にこんな場所があったなんて驚き。というかなんのためだろ?
「モンスターよ、気をつけて!」
地下には地下らしく、ネズミ系のモンスターが巣くっていた。
あぶない、ノアが手ひどい傷を負わされた!
「このっ……1、2、3、ファイアー!」
怒ったノアの魔法がネズミを一匹焼きつくす。素早いからなかなか攻撃がヒットしない。私も数回に一度は失敗だ。シロウなんか三回に一回も当たってなくない?
当たると一撃だけど。
「ノア、敵全員燃やしちゃってよ!」
「だめっ。こんな場所でMP浪費できない。どれだけ広いかも分かんないんだから。マップもないし」
クールでシビアな子だこと。
でも確かに魔法で楽をすると、後でしんどい思いをすることになる。魔力のなくなった魔法使いは、わりとモンスターに狙われちゃうから、防御しても防御しても 足りないくらい。
回復アイテムもそろそろ心許ないくらいだし。
「暗黒神殿って、ろくでもないわね。こんなとこに落とすなんて、罠もいいとこ。善良な旅人に向かって」
「そうよそうよ。信心してるやつの気が知れないわ」
「俺だって好きで信仰してるわけじゃないし……だいたい、君たちがお布施に馬鹿高いゴールド費やしても俺、ぜんぜん文句言わなかっただろ!」
「今、言ってる。たった今、本音漏らした。馬鹿高いって思ってたんだ。無駄遣いだって思ってたんだ!」
ノアが全力で絡むと、シロウはややひるんだ。
「お、思ってないけど……」
「そうなの? 私は馬鹿高いと思ってるけど」
「あのなあ、ノア!」
ネズミは、「チーズのきれはし」というアイテムを落としてくれた。こういうアイテム、いちおう食べたら回復できるんだけど、全然食べたくないのは私だけじゃないよね。
さて、地下道は分岐していない。まっすぐ進んでいく。
やがて大きな扉にたどり着いた。
その前に腕組みして立っているのは、レベル30は軽く超えてそうな巨漢。装備してるのは、大きな剣。グランド・ソードというオオトカゲを倒したときにもらえるという逸品。売ると2万ゴールドは固い、レアアイテムらしい。モンタが説明してくれた。
「シロウ」
「なんだよ、ノア」
「私が昔したことあるゲームでね、アイスソードっていうアイテムを見せびらかしてるキャラクタがいたの。
そこでね、選択肢が出てくるの。
→殺して奪う
って」
「リンダポイントが100超えるだろ!!!」
「何だお前たちは」
シロウのつっこみを耳にした巨漢はこちらに気がついた。
そこで、
選択肢が出てきた。
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