シロウはさっそくサンダーソードを試してみたいと思ってるみたいだったけど、
「んじゃ外に出てみよう!」
……の前に、私たちにはするべきことがあった。
酒屋で情報収集である。
「いらっしゃーい!」
教えられた酒屋は繁盛していた。人がたくさん。レベルが高そうな戦士に、魔法使い……うーん、装備が高級。
でもみんなあんまり元気なさそうなのよね。やはりそれは、
「あんたも虹の町から出ることができなくなっちゃったの?」
「あんたも言うからには、あなたも?」
「そうそうそう。もちろん私もよう……ほんと最悪よねえ」
銀髪をポニーテールにし、赤い鎧を身にまとった魔法戦士のお姉さんがビール片手に嘆いた。
「この町の呪いについて、どこまで知ってるのう?
……あ、私はノーマ。よろしく」
「私はサラです。よろしく……呪いについては、あんまり知らないの」
「この酒場の地下に、よっぱらったおじいさんがいるんだけど、その人が呪いについては詳しいわよ。聞きに行けば?」
「へえ……ありがとう」
言われたとおり、酒場の地下にいく階段を下りていった。
なんだろ。地下って。選ばれし酔っぱらいの集う場所かな?
と思ったら、ほんとにそこは酔っぱらいの楽園だった。みんなぐでんぐでんに酔っぱらってテーブルにつっぷしている。
「ミュンヒハウゼンめ……次こそは、次こそはあああ」
「ぬう……牛さんに豚さんに、猪さんんんん」
「なんか姫の教育上に悪いよな、ここ」
「おお、なんと心遣いの行き届いた男になったものよのう、シロウ。それもこれもわらわの教育のたまもの。わらわに感謝するとよいぞよ」
「うん、ありがとう」
なんて会話が聞こえてきた。それでいいのシロウ!? と胸ぐら掴んでゆさぶりたくなるが、そこは敢えてぐっと我慢する。
「酔っぱらったおじいさんって、あれかなあ」
ノアが指さした先には、サンタクロースみたいにかっぷくのいい、赤鼻のトナカイみたいに真っ赤な鼻をしたおじいさんがいた。周りには数十本も酒瓶が転がってる。
確かに教育上どうかと思うようなありさまだ。
「なんだ、お前たち。新顔だな。
町に来て間もないのか?」
ういっく、としゃっくりしながらおじいさんは話しかけてきた。
「うん、そんなところ。呪いについて教えてくれる?」
代わりにものすごく美味だという伝説のブランデーを持ってこい。
なんてケチなことは言わず、おじいさんは呪いについて語り出した。
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