RINDA RING  EVEMT03-10「虹の谷へ!」



 虹の谷に向かう前に、

「レジスタンスに危険を伝えますか?
 →伝える
 →伝えない」


という選択窓が立ち上がった。
 町の入り口のところに、レジスタンスのメンバーたちが集ってたあの場所でみかけた、女の人が立っている。彼女はこちらをちらちら気にしつつ、話しかけてこられるのを待っているような感じ。

「どうする?」
「伝えた方がいいんじゃない?」
「そうね。洞窟から帰ってきたらかれらが全滅していた……なんて後味悪すぎるわ。教えてあげましょ」

 ノアの言葉に具体的な想像がふくらんでしまった……うう。伝えるわよ!


「あらー。あんたたち。これからお出かけ?」
 気をつけてね……え?
 ………………
 そんなことがあったの?
 へえー。わざわざ教えてくれるなんて……ま、レジスタンスとして当然のことかもしれないけど。礼は言っておくわ。ありがとう!
 じゃこれから対策会議だわ。来る?」


「対策会議に
 →行く
 →行かない」

という窓が立ち上がる。
「会議、出るう……?」
「時間かからないならいいけど。うーん、でもなんか変な役目負わされても困るわ。ミュンヒハウゼンの屋敷を見張っておけ! 強制! みたいなことになったら」
「そうだな、じゃやめとこう」

 シロウが、行かないを選択する。
 すると女の人は「せっかく会議なのに……ぶつぶつ」と文句を言いつつ、去っていった。

「あの人、私たちにこの町の呪いおっかぶせた人じゃない?」
「ああ、思い切りベンチすすめてくれた人だよね」
「ふんだ。なんでわざわざ同意もしてないレジスタンスの、つまんなそーな会議に出ないといけないのよ。これから楽しい宝石ゲットの旅に出るんだから」
「…………もしかしてノア。竜の洞窟なんて、宝石の前にはかすんでる……?」
 ノアはふっと笑った。
「このリングワールドにはね、『永遠迷宮』っていう変化し続けるダンジョンとか。空に上り詰めた後にジャンプして谷底に落ちる『世界で一番高い塔』とか、モンスターと延々100匹戦い続けることが義務づけられた、『格闘王の庭』とか、それはもう大変そうなダンジョンがいっぱいあるのよ」
「…………うん」
「それに比べたら!
 洞窟? 竜?
 シンプルきわまりないわ! なんの苦難も感じないわね!
 知恵と勇気の前に、ドラゴンなんてねじ伏せちゃえばいいのようー!」

 た、たのもしいー!
 たのもしいのに、なんで涙が出ちゃうんだろう!?






*******




 虹の谷に向かう道を、マップで確認しつつ。
 私たちは外に出た。ホラー教会もまだある。でも、私たち別に消耗してないから、泊まる必要はない。教会の前に神父さんがホラーなたたずまいでおいでおいでしていたので、シロウの足が速くなった。

 虹の洞窟までは、少し距離がある。
 地形はちょっと荒れ気味。隆起が激しくて、なんか高原を竜の爪でひっかいたみたいになってる。
 だんだん高くなっていくんだけど、やがて丘が見えてくるはず。

「ふむ。そなたら、わらわのキャンデーはちゃんと買っておいたようじゃのう。
 よきかなよきかな」
「姫様〜。外の世界を見てみたいとか言ってたけど、こんな感じで満足したのかなあ?」

 姫は余裕たっぷりにつぼのなかから外を眺めた。パノラマで、180度。

「そうじゃのう。
 つまらぬのう。単なる丘陵山岳地帯じゃ!」

 なにが丘陵山岳地帯か!!
 拳を握っちゃいそうになる……いやいや。だめだめ。

「でも、世界は美しい。フーセンのような大男と、禿げてるくせにパーマーなんて名前の俗物の、下らぬ会話よりは楽しめる」
「あれ? 姫様寝てると思ったのに」
「ZZZZZZZZて言えば寝てることになるのじゃのう? うふふふ」
「……油断ならないなあ」

 この地帯には、空飛ぶ敵が出てきた。
 しかも嬉しくないことに、ワイパーン! 翼竜だ。ミニワイパーンが一匹なら私とシロウの攻撃がヒットすれば倒せるんだけど、三匹もつるんでこられたらやや苦戦する。
 しかもミニワイパーン、五匹に増殖しようもんなら、
「我等を生け贄にブラックワイパーンを召喚!」
みたいなフォーメーション組んで、地面から黒いでっかい翼竜が出てきちゃうのよ!

 最初は
「レベル、稼いでみよー!」
てことになって、戦ってみたけど。
 ……一撃でシロウのHPが三分の一削られたもんね! もしノアにヒットしてたら、一撃死よ。全く。



「でもさー。あれ倒せなくて、ガルディエントが倒せると思う……?」
「……思わない」
「ちょっと頑張ってみない?」
「でも、ノアが当たったら……やばいよ」

「ちょっと考えてることがあるんだ。
もし倒されたらほんとにすまないんだけど、もう一度だけアレと戦ってみたいの」
 ノアが主張する。
 私とシロウは、顔を見合わせたけど、そこまで言われてNOと言う理由もない。まあもし全滅したとしても力強く虹の町に戻るだろう。誰かが死んでも、頑張って生き返ることができるよう……資金を。
「サンダーソードを売ればいいのよ」
「待ってくれ! これは! これだけは!」
「……冗談よ」
「聞こえなかった! 今、冗談じゃなかったよな!?」


 で、ミニワイパーンたちと戦った。防御していたらちくちく攻撃しつつ、仲間を呼び集める。
 そしてしばらく我慢していると、五匹のミニワイパーンたちは召喚儀式を始めた。
 この儀式、なかなかかっこいいのよね……。召喚ていいわよね。
 この世には召喚士て職業もある。結構レベル上げめんどくさそうな感じがするし、自分で戦えないのはつまんないかもしれないけど、でも召喚てロマンよねー。

 いやそんなのはともかく!
 ブラックワイパーンが、地の底から召喚されたっ!!

「フグォォォオオオオオオオオオオオオオ!」

 吠えながら、ブラックワイパーンは私たちを一人一人ターゲット化する。その間にぴこぴこ攻撃すればいいんだけど、こいつのHP全部でいくらあるんだろ……。シロウで50。私で35くらい、削れる。
 しかしノアの魔法! 炎が……

「あれえ?! ノア、なんのアイテム使ってるの」
「うふふ。これ、さっきの町で手に入れた……

 根性試しキャンディを! 姫様に使用っっ!!!」

 うわ。
 うわわわわわわわわ!! それを、ここで使っちゃうわけ!?

 驚いてる間にノアが、姫様にキャンディを食べさせてしまった。
 す、すると……

「むぐむぐ……
 …………ぐ、

 くはぁぁあああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっっ!!
 なんなのじゃ、なんなのじゃこの味は。
 ひどいのじゃだめなのじゃ、うわあああああああああああああああああああああああああん!!!!!!


 姫様のボイスが、炸裂した。
 ブラックワイパーンに。

 すると、ブラックワイパーンがぴよぴよ状態になった!

「ごめんね、姫様!
 じゃあみんな。今のうちに、一斉攻撃よーーーーー!!」
 ノアが杖を向ける。

 シロウのサンダーソードが炸裂。追加効果でカミナリの一撃!
 そして私のドラゴンナックルは、ドラゴンに特効! 運が良ければ、二回攻撃。
 ノアは炎。……ブラックドラゴンには、炎がきわめて有効!!

「ぐおおおおおおおっ!」

 途中で我に返ったブラックワイパーン。しかし、時既に遅し。
 だいたいHPが1000くらいだったみたい。ノアの最高魔法が当たれば、150もダメージが当たるし。ぴよぴよ状態の間にかなりHPを減らしたおかげで、かれが正気に戻っても私たち、危機というほどの危機には陥らなかった。

 そしてずずーんと音を立ててブラックワイパーンが地面に倒れたとき!
 シロウのレベルが上がった! ノアのレベルが上がった!

 ……私だけ上がらなかった。うわーん、こんなときちょっと悲しい。いいけどさ……タイミングだから。それに、ブラックワイパーンを倒した喜びがそんなこと、かき消しちゃうもんね。

「やったー! ノア、さいこー!」
「作戦大成功!!」

 私たちは手に手を取って喜びを分かち合った。でも、

「ううう。ひどいのじゃ……そなたら、わらわをなんと心得ておる!?
 まだ舌がぴりぴりするのじゃ……ううううう、うぇ〜〜ん」

 ……姫様が泣いてしまった。なんともはや、可愛い。
「ごめんなさい、姫様。
どうしよう……シロウ」
「姫様、口直しにキャンデーあげるから、許してくれないかなあ?」
「うううう、そんなことでわらわのハートはなぐさめられないのじゃ! そなたらは、そなたらは、うわーーーん!!」





*******




 姫様が泣きやまない。
 そして私たち、忘れてた。
 外をうろつくことがとても危険だってこと……モンスターじゃない、彼ら以外の敵が私を追っているのだということ。

「あなたたち。
 姫様が泣いているではありませんか」

 そんな声がしたとき、私ったら
「そうよー、どうしたら泣きやんでくれるのかな」
なんて口走ってしまった。

「貴方達が姫様をかどわかすから悪いのですよ……?
自覚なさい、犯罪者ども」

「へっ?」
 そして私たちは。
 私たちが来た道に、彼女が立っているのを見つけた。
 騎士、ユリア。姫様の親衛隊。第一のファン! その執念と怒りは、今や最高潮! みたいな!

「うふふふふふふふふ。
ここで会ったが百年目……どれだけあなたたちを憎いと思ったか……今すぐに、教えてあげましょう。この剣で!!」

「う、うわーーーーっ!!」
 私たちは脇目もふらずかけだした。
 まずい。あれ、非常にマズイ。まるで勝てる気がしない!
 だって剣を構えた背後に、鬼の顔が見えたよ!!
 ブラックワイパーンより怖い。

「ちょっ……待ちなさい、あなたたち!
姫様を置いていきなさーーい!!」
 やっぱり追いかけてくる。当然よね。

「ほほほほほ。そなたら、走るがよい。走るがよい。
 つかまったらわらわは、『いやがるわらわを無理矢理連れ去ったのじゃ……』と証言するからのう。うっふふふふふふふ」
「っくーーーー!」
 全力で走る。
 まずいよう、あんな足の速そうな人、すぐ追いつきそう。
 ……後ろを確認する。

 すると。
「待ちなさいったら……! あうっ
と、ユリアさんが転んでいた。

 なに。
 ドジッ子……?

 その隙に私たちは、どんどん距離を離していったのだった。



NEXT?



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