出てきたのは……オルゴール。かな。これは。木でできた、小さな箱だった。
「い、いいか。開けるよ」
シロウがどきどきしてる音まで聞こえてきそう。私とノアは、固唾をのんで開かれるオルゴールを見つめている。
そして開かれた蓋。聞こえてきたのは、予想したようなオルゴールの音色ではなく。
声、だった。
「…………旅人よ。私は、ガルディエント。私の声が聞こえますか?」
理性的な、女の人の声だ。
「そこにいる私の身体は、本物の身体ではありません。
もし地下に行きたいと望むのであれば、戦闘を宣言し、倒すと良いでしょう。
簡単なことでは、ないでしょうが」
その声音は静かなものでありながら、抑え込まれた迫力に満ちている。
人の声でありながら、人のものではない……そんな感じ。
「……私の過ちの話をきいてくれますか?
私は、このダンジョンの奥で、卵を守っていました。私の大事な子供。なのに、あの日……卵は奪われてしまいました。必死になって、探しました。だけど、卵がどこにあるのか分からない。
ある日、現れた魔法使いが言いました。
『卵を奪った者は、クールデルタの町にいた旅人に違いありません』
と。だから、私は思いました。時戻しの魔法をひとにかけてしまえばいい。
クールデルタの町は竜の加護を受けた町。あの町で憩う者は、竜の息吹を受ける。その者たちに、呪いをかけてしまえばいい……すべての旅人があの町から出られなくなってしまえば、卵泥棒も、きっと戻ってくることになる。
虹の町クールデルタ。あの町の虹は、そのとき消えてしまった。
そして……卵は戻ってこなかった。
卵は……どこにあるの?
虹の町から虹が消えてから、これで十日がたつ。
あの町に戦いの火種がある。私には見える、もうすぐ争いが起こるでしょう……だけど、私はあのとき敗北してしまった。黒い稲妻に打たれ、動けぬ身です。
旅人よ、どうか私の声を集めて。そして真実を見いだしてください。」
「うううーーーん……」
悩みながら竜に見上げてみると、
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