天をつくような門。
なんて表現が、冗談ではなかった。エメラルド色をした石を積んで積んで積みまくってできあがったそれは、まるで神々の門のような迫力で私たちを出迎える。
門に刻印された文様は、騎士。薔薇を抱いた騎士が剣をもち誓う格好で、門にその姿が刻まれている。
不意にぽーんぽーんと音がして、空に花火じゃない、ほんとの花がはじけとんでいる。花爆弾みたいなのをうちあげて、破裂させているのだ。まるで桜吹雪のように花びらが舞い散っている。
まるでお祭りみたいに。
王都は、貴族の都トルデッテすらかなわない華美で私たちを圧倒する。
エメラルドの都、だけど近づいていったら分かった。目を疑うような色の洪水。基本は緑色だけど、無邪気な子供が絵の具を散らばらせたみたいに、いろんな色が咲いている。店店、教会、さまざまな建物! みんなとても見ていて楽しい。
「う、わあああーーーー………」
私たちはばかのように周りをきょろきょろしている。
道を行く冒険者の、なんか強そうな事と言ったら。見たことのない防具とか武器とか。あなたそもそも職業なに!? て、ききたくなるような人もちらほら。
まず通りの広さがただごとでない。
この町のつくりは、まず北側にお城があって。 その女神が両手を開いたような形をしたお城から指を広げた数だけ通りがあって。その間にいろいろな建物が並んでいる。お城の大きさがただごとでない。だって普通に見ただけじゃ端と端がいちどきに見えない。見上げただけじゃ、てっぺんが見えない。
「さすが『至福の王』のお城なだけあるわね!」
「なに、その私服て。制服とかあんの?」
私の質問はノアのお気にめさなかったらしく、軽く無視られてしまいました。いいもんそんなこと気にしない!
懐はわりと、潤ってるのよね。
前のイベントで入ったお金は、装備に投資して消えたとはいえ。トルデッテからここまで来るのにちょっとは戦闘をこなしたもんね。あの憎むべきウッディ☆モンキー……思い出すだに踏みにじりたくなる。あいつらを倒したお陰で、うーーんと……
「500ゴールドかあ。微妙な数字だね。やっぱお金たまりにくいよねー」
「回復手段がないから、薬草買っちゃうもんね。どうしてもそれは必要だもん」
「うーん、そろそろなにか考えた方がいいよね。たとえば回数無制限の回復アイテムとかないのかなあ。元気杖とか」
「その安直なネーミングは何事よ。たとえば『ホーリィワンド』とかぁ、『リペアウィップ』とかぁ、『リカバリーソード』とかぁ」
「なにそれ」
「シロウが剣を振るうたびに回復するのよ」
「五回に一回は暴発してダメージ、とかね。それがまたよく暴発しそうよね」
「なんだよ、想像のアイテムで俺をからかうのはやめてくれよ!」
シロウは怒ったけど、いやしかし想像はあまりにもリアリティ溢れてる。この逆ビンゴ男。「はずれなし」でも空くじをひきあてそうな男。あるいは運がいいのかも知れないけど。でも
「また呪われるのだけは勘弁してよね。次やったら怒るわよ」
「怒られても、別にわざとやってるわけじゃないし!」
「わざとの方がましなときってあるわよねー」
なにげない一言がいたくハートを傷つける。ハムスターに元気づけられるシロウを後目に、あ、あっちに人が集まってる、とノアが行くのについていった。 |