なんかね、元気いっぱいに疑いもなく
絶対絶対絶対ぜっっったいこいつらをこのイベントに参加させてやるぞ!
て、うららかでさわやかで断固とした決意に満ちた姿を見ると。
うん。なんかあるんじゃないかなーーと……いやな予感にかられたりするわけですけど。
一応言っておくと、ユリアさんいやなひとなんかじゃ全然ない。積極的に人を陥れてやろうとか、俺様の策にはめてやろうとか、とある女神像収集家みたいなところは全然ない。
でも多分、善意と真心で人を陥れてしまうタイプの人とみた。結果的に、そんなつもりじゃなくても、相手をのっぴきならない状況にしてしまう……
まあ私の野生のカンが告げているだけですけど。
「まあ! トルデッテのイベントをクリアーされたんですか?
あれはまだほとんどクリアーしたひとがいないので有名なんですよ! まあ、おめでとうございます。すごいですよ!」
誉められて悪い気はしない。
「だったら、アリエッタ様と直接会ってイベントをもらうことができますね! ええ、アリエッタ様関連のイベントの八割は、直接会うことができればただで貰うことができるんですよ」
なにそのありがたみのなさ。
ああ、最近私性格が悪くなってる気がするわ? ダメよ心うららかに平らかに生きていかなきゃ!
「それは面白そうですね、『世界で一番我が儘な姫君』に会えるなんて!」
ノアが手を叩く。
そっか。アリエッタ姫ってそういうあだ名があったっけ……、それは是非。
会いたくなくなくないそれ!!?
是非ともなんて言うほど素晴らしいものかなそれ!?? 確かに面白そうではあるけどさ!
ちらりと見るとシロウも目を閉じて悩んでいる。ノアはのりのりだけど。もうこの子を止めることはできない……。
「それはおいといて、このイベントをクリアーしたら手に入る『青の美姫』のことですけど」
それは確かこの前会ったときにユリアさんが言ってた。青の美姫っていうアイテムが手に入りますよーって。
「あ……はい、えっ……と。う……」
しかし返事ははかばかしくなかった。
ぴくっとノアが反応する。
「じゃ、行こうかサラシロウ。さよならユリアさんお元気で」
なにその即断即決ーーーーー!!
待ってください待ってください待ってぇぇぇ!! とユリアさんの声がかなりせっぱ詰まって追いかけてくるまでノアは足取りをゆるめようとしなかった。
「だったらなんであんな微妙な返事するんですか」
「だって、その、ちゃんとクリアーしないとそのアイテムは手に入らないんです……。このイベントをとても綺麗な形で終わらせることができなければ……」
しどろもどろになりながらユリアさんはそう言った。
なんとなく、ヒントを貰った気がした。覚えておくことにしよう。ううん、ノアが覚えてるだろう。
しばらく会話をしたあと、ユリアさんは
「じゃあ、城に行きましょうか?」
と提案した。
ふわっ……とまた風船がまき上がる。幾千幾万の色彩が空の水になじむような美しさに、何度でも酔いしれることができる。
「どうやってあの城に入るんですか?!」
「入城資格をもつひとだったら、誰だって簡単に入ることができますよ」
こともなげにユリアさんは言う。
「あ、でも簡単……ではあるけど、ちょっと難しいかもしれないかしら」
「なんですかその微妙な……あっ」
広場の向こう側に何かを見つけたらしく、ユリアさんはいきなり走り出した。私たちは慌てて追っていく。風船、風船、たくさんの風船の中から……あ!
「あの金色の風船をつかんでください!」
一番そばにいたのは、ノア。慌ててそれをつかむと、ふわっと足がそらに浮いた!
「きゃ……!?」
びっくり顔のお互い。そのままノアの身体は風船と共に空に浮かんでいく。周りからは「あはははは、飛んでくー!」なんて声が上がっている。
「金色の風船を探して、掴んでください。風船の固まりが飛んでいくのは数分に一回です。別に珍しくありませんけど、誰かに先をこされたらとても悔しいので……お気をつけて!」
ユリアさんは風船を見つけると綺麗な足取りで飛びついた。そして髪をなびかせながら空を飛んでいく。
私も、私も飛んでくぞ! シロウと顔を見合わせ、ニッと笑うと互いに走り出した。金色の風船、金色の風船……
「見つかった?」
「あーん、次のタイミングを計るしかないね。一緒にいると、絶対取り合いになるから……逆方向に走ろう!」
「そうしよう、城で待ち合わせだな!」 |